青色申告にすればさらに節税に
前項では、経理が得意でない人は、
白色申告がいいと述べましたが、
もし経理が得意な人、几帳面に帳簿をつける人ならば、
青色申告にしたほうが節税になります。
青色申告というのは、先ほども述べましたように、
一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて申告する人は優遇措置が受けられる、
という制度です。
具体的にどういう優遇処置が受けられるのかというと、
主なものは次の4点です。
(1)65万円または10万円の青色申告特別控除を受けられる
(2)家族や妻(夫)の専従者給与を経費にできる
(3)貸倒れ引当金が設定できる
(4)「赤字の繰越」と「赤字のときの前年分税金の還付」
(1)の青色申告特別控除というのは、
正規の複式簿記で帳簿を作り、
貸借対照表と損益計算書を添付して確定申告期限に提出した場合には、
所得を65万円控除するというものです。
所得が65万円控除されるということは、
税金が65万円安くなるという意味ではありません。
簡単にいえば、経費に65万円が上乗せされるということです。
なので、税額にすれば、税率10%の人ならば
所得税、住民税合わせて13万円が節税になります。
また複式簿記ではないけれど、
青色申告の条件を満たす帳簿をつけている人(簡易方式)は、
所得を10万円控除できます。
(2)は、家族や妻(もしくは夫)に事業の専従者として給料を払えば、
その給料分は経費として認めましょう、ということです。
この場合、支払う給料の額は事前に届け出なけれればなりません。
青色申告でなければ(白色申告ならば)、専従者給与は事業の利益の半分まで、
最高で86万円(妻以外の場合は50万円)しか出すことができません。
つまり、事業で利益が出ていない場合は、
専従者給与を出すことはできないので、
事業所得を赤字にする技として、専従者給与は使えないのです。
だから、もし妻や家族を従業員にしたいような場合は、
青色申告にするといいでしょう。
ただ気をつけなくてはならないのは、
青色事業専従者として給与の支払いを受ける人は、
配偶者控除や扶養控除の対象になれません。
もし、妻が青色事業専従者となった場合、
夫の配偶者控除が受けられなくなり、
その分、課税される所得が38万円増となります。
だから、ちょっとくらい給料を払うのに、
青色事業専従者になるのはバカバカしいということです。
払うなら、ドカーンと払うべきであり、
それだけの余裕がないのであれば、
この青色事業専従者を使うのはもったいないということです。
(3)の貸倒引当金というのは、売掛金、貸付金などが貸倒れになったときのために、
あらかじめ損失を計上して資金をプールしておくという制度です。
この貸倒引当金は、青色申告をしている事業者のみが使うことができます。
貸倒引当金は、年末の売掛金、貸付金などの5.5%を繰り入れることができます。
金融業の場合は3.3%になります。
だから売掛金、貸付金の残高が100万円あった場合は、
5万5000円を経費として落とすことができるのです。
ただ貸倒引当金は、もし貸倒がなかった場合は、
翌期の利益に加算されます。なので、
節税効果があるのはだいたい最初の年だけということになります。
(4)の「赤字の繰越」というのは、
赤字が生じたときには、その赤字額を翌年以後3年間にわたって、
各年度の所得金額から差し引くことができるというものです。
たとえば、ある年に200万円の赤字が出たとします。
翌年は100万円の黒字、
翌々年も100万円の黒字でした。
この場合、最初の年の赤字200万円を繰り越せるので、
翌年も翌々年も所得はゼロということになるのです。
白色申告の場合はそうはいきません。
ある年に赤字が200万円出て、翌年100万円の黒字が出た場合は、
翌年の黒字100万円に対してしっかり税金が課せられます。
また「赤字のときの前年分税金の還付」というのは、
赤字が出た年の前年は黒字で税金を払っている場合、
どちらの年も青色申告をしていれば、
前年に払った税金を還付するというものです。
だから、青色申告の場合は、利益が出て税金を納めた年があっても、
翌年赤字だったら納めた税金の一部が戻ってくるというわけです。
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領収書は残さないといけないのか?
税務申告というと、領収書を取っておかなければならない、
と思っている人が多いうようです。
確かに、領収書は取っておいたほうがいいのです。
領収書を取っておくことは、
義務というわけではないのですが、
もし税務調査などが入ったとき、
申告書の正当性を主張する証拠として有力だからです。
ただし領収書がなければ、絶対に経費として認められない、
というわけではありません。
もし領収書をもらい忘れたからといって、
その経費を諦めることはありません。
本当に仕事のためにお金を使った、
という事実があるのなら、
経費として計上できるのです。
たとえば、電車代の領収書をもらい忘れていたとします。
ならば、年間だいたいどのくらい電車を使うかを割り出し、
電車賃を算出します。
それをもとに、経費として計上すればいいのです。
この際に気をつけることは、
概算で経費を算出するときは、
実際よりも少なめにしなければならない、ということです。
経費が実際よりも多くなってはマズイですが、
少なければ問題はないのです。
帳簿は、きちんとつけなくてはならないのか?
確定申告をするには、帳簿などをきちんとつけていなければならない。
と思っている方も多いでしょう。
原則からいえばその通りです。
ですが、白色申告であれば、そう神経質に帳簿をつける必要はありません。
これまでも何度か触れましたが、
確定申告には2種類あります。
「青色申告」と「白色申告」です。
青色申告は、帳簿などをきちんとつける代わりに税制上の特典を与えましょう、
というものです。
一方、白色申告は、青色申告をしていない人の総称です。
青色申告の申告書が青いのに対し、
白色申告の申告書は白いので、
そう呼ばれるようになりました。
で、白色申告では不都合かというと、そうでもありません。
自分でやる副業の申告くらいならば、白色申告で十分だといえるでしょう。
そして白色申告で、所得が300万円未満であれば、
帳簿をつける義務がほとんどないのです。
いや、義務は一応あるのですが、
つけなかったからといって罰則はないのです。
所得が300万円というのは、経費を差し引いた利益のことですから、
1000万円くらい売上があっても、
経費700万円以上あれば所得は300万円未満となります。
自営業者の平均的な経費率というのは、
6割から7割ですので、だいたい売上1000万円までは、
帳簿をつけなくていい、ということになります。
でも、青色申告ではそうはいきません。
帳簿は正確につけなくてはなりませんし、
素人には難しい複式簿記の製作もしなければなりません。
だから、副業の申告で、経理があまり得意ではない人であれば、
白色申告のほうが有利だといえるでしょう。
確定申告は簡単
副業をして税金を安くするには、
前提条件として、自分で確定申告しなければなりません。
確定申告とは、毎年2月16日から3月15日の間に税務署で行われている、
自営業者などの税務申告のことです。
「副業を申告すれば税金が安くなるといっても、
確定申告とかをするのは面倒くさそうだからなあ」
そう思って尻込みしてしまう人も多いでしょう。
しかし、確定申告というのは、そう難しいものではありません。
青色申告ならばともかく、白色申告ならば、
まったく難しいことはありません。
副業の売上からいろいろな経費を差し引いた、
簡単な「損益計算書」、これを作る技術があれば、
だれでもできます。
損益計算書といっても、
いくらお金が入っていくら使ったということを書けばいいだけです。
小遣い帳をつけるレベルで可能です。
慣れない人は、半日くらいかかってしまうこともあるかもしれませんが、
慣れれば2~3時間で作れるようになるでしょう。
確定申告では、会社からもらう源泉徴収票に書かれている「給与所得の内訳」と、
「事業所得(損益計算書で計上された”赤字”)」を記載して
税務署に提出します。
最近の確定申告書の用紙は、非常にわかりやすくなっており、
「確定申告の手引き」も充実していますので、
経理の素人でもすぐに書けるようになります。
税金が何十万円も返ってくることを考えれば、
1日、2日つぶして申告書を作ったってバチは当たらないはずです。
また申告書を作ることによって、
経理の仕組みが理解でき、
会社の仕事にも好影響を与えるかもしれません。
決算書も読めるようになるかも知れませんし。
やってみて損はないことだと、いえるでしょう。
開業の手続きは簡単
「事業を開業する」というと、非常に煩雑な手続きを要するようなイメージがあります。
確かに、業種によっては面倒な手続きが必要なものもあります。
たとえば飲食店などでは保健所の許可を得るなど、
役所への届け出関係がたくさんあります。
ほかにも、業種によっては複雑な手続きを要することがあります。
各業種の開業関係の手続きについては、
ぬかりなくやらなくてはなりません。
本書では各業種の手続き関係のについてまで言及する余裕はないので、
その点はしっかり研究してください。
しかし税務申告に関しては、手続きは非常に簡単です。
というより、税務申告においては、事業を開始するに当たって、
役所へのこれといって手続きなどは必要ありません。
税務署には「開業届け」というものがあります。
これは、事業をはじめた人が「開業しました」という報告をするものです。が、
これは出したほうがいいけれども、出さなくても、
事業所得として申告できないものではありません。
逆に開業届けを出したからといって、
開業が認められたというわけでもありません。
まあ開業するなら、一応出しておいたほうがいいでしょう。
書き方は非常に簡単です。
住所と事業内容を書く程度です。
自分ですぐに書くことができます。