なぜ、サラリーマンは怒らないのか?
昨今、中流層以下のサラリーマンをターゲットにした増税ばかりが続いています。
いや、名目的な増税は行われていないのですが、
実質的な増税は行われているのです。
「増税」という言葉を使えば、
国民は猛反発し、
政権の支持は一気に下がります。
なので、増税という言葉を使わずに巧妙に税金を増やしているのです。
それには、税金の取り方を変えたり、これまで認められてきた所得控除
(税金の割引制度)を廃止する、
などという方法が使われます。
たとえば、2004年には配偶者特別控除というものが廃止されました。
配偶者特別控除というのは、
仕事をしていない奥さん(もしくは夫)がいる人は、
従来認められてきた配偶者控除とは別枠で控除が受けられます。
という制度でした。
この配偶者特別控除は、働きたくても働けないお母さん、
小さい子供がいる家庭、
子供がたくさんいる家庭などの税金を安くする働きを持っていました。
消費税が導入されるとき、
もっとも影響を受ける低所得者の家庭に配慮した制度だったのです。
でも税収アップのために、廃止されてしまったのです。
つまり、一番お金が必要な家庭、
一番苦しい家庭に対して増税を行ったのです。
「削るところはもっと他にあるだろう」と思うのは、
私だけではないでしょう。
また2007年にも、住民税改正のドサクサに紛れて、
低所得者層の増税が行われています。
2007年の住民税改正では、
国は、「実質的な税金は変わらない」と説明してきました。
でも、よくよく検討すると、これは真っ赤な嘘だったのです。
それまでの住民税は、所得の多寡に応じて、
5%、10%、13%の3段階に税率が分かれていました。
しかし2007年の改正で、所得の多寡にかかわらず、
一律10%という税率になりました。
その代わり所得税の税率で調節し、
住民税が上がる人は所得税が下がり、
住民税が下がる人は所得税が上がるようにし、
所得税と住民税の2つを合わせればプラスマイナスゼロになるように設定されたのです。
国はこの改正について、
「住民税と所得税と合わせればプラスマイナスゼロなので、
増税ではない」と説明してきました。
でも実は、これは正しくありません。
というもの、住民税と所得税では課税範囲がちょっと違うんです。
住民税のほうが、所得税よりも課税範囲が広いのです。
住民税と所得税では、同じように所得にかかる税金であっても、
住民税のほうが高くなるのです。
2007年の改正では、高額所得者は所得税の割合が増えて住民税が減り、
低所得者は所得税の割合が減って住民税が増える、
ということになっています。
ということは、住民税の割合が減った高額所得者は減税となり、
住民税の割合が高くなった低所得者は増税となったのです。
そして住民税は、課税最低限よりも低く設定されています。
つまり、所得税を下げて住民税を上げるということは、
これまであまり税金を払わなくてよかった低所得者層に税金を課すようになった、
というわけです。
「住民税の改正はプラスマイナスゼロ」
というのは、真っ赤な嘘ということになるわけです。
これは計算すれば、だれだってすぐにわかる歴然たる事実なのです。
なのに、国民はだれも怒らない、
野党だって共産党も含めどこもほとんど文句をいっていないのです。
新聞や雑誌も、ほとんどこのことを取り上げませんでした。
政治家やマスコミまでもが、
税金のことをいかに知らないか、ということの象徴的なできごとだと私は思います。
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